ぶら下がり日誌〜ボルダラーへの道〜

子育て、仕事、パン、文具。ときどきファミコン。

行旅死亡人

 何だかわからんがこの中華料理屋に来ると喧騒がすさまじい。中華料理屋といえばガシャン、ピシャ! であるから、そのなかで、といったらもう想像を絶するノイズである。

 

 「早稲田の演劇のいちばんいい時代」とかなんとか叫んでいる人たちがいて、4名と7名のふた組なのだけど、酒で耳をやられておたがいの声がきこえなくなって、結果あらん限りのヴォリュームまで上がりきったところへ入りこんでしまったもよう。

 

「代々木公園から?」

 

「いや俺らは大学から。第四機動隊の宿舎を通って有楽町まで行く」

 

「あいつらはホント学生を憎んでっからさ。長距離トラックの運ちゃんが自転車乗りを憎むようなもんよ。みんな高卒だし」

 

「1963年、安保で民衆は負けて、でもくすぶってた」

 

「劇研に入ったのにいきなり竹の棒みたいなの持たされてデモの訓練させられて、ほらメーデーね」

 

「ひと月ほど練習してだいぶデモがうまく出来るようになったと思ったら、5月1日になったわけ」

 

「劇やるために入ったのにデモやってんだから」

 

「授業なんて出てみたけどつまんなかったね。あんなもの3日くらい本読めばそれですんじゃう」

 

「世に出て野に出て街に出て考えろ!」

 

 ・・・だって。無理につきこんでもむだな思いというものはある。