図書館に『シンプル・フライフィッシング』という本があったので借りてみたら著者の一人がイヴォン・シュイナードだった。
シュイナードといえばパタゴニアの創始者である。シュイナードといえば50年代アメリカのクライミングで、ロイヤル・ロビンスとかエルキャピタンとか、そんなイメージだったから、ウオ釣りもするとは知らなかったな。
たしかに、河原のボルダーで遊ぶついでにルアーを投げたり、沢登りの合間に竿を出したり、そういう感じならとてもよくわかる。
クライマーというのは克己的であると同時にfun loving peopleであり、おそらく釣り人もそうなのだろう。つい先日、エドワード・グレイの『フライ・フィッシング』を読んでそう思った。
この『フライ・フィッシング』、適切なたとえではないかもしれないが、吉田健一を読んでいるような感覚で読める。こんな風に英国の気質を伝える翻訳は、開高健が講談社学術文庫版の序文に書いているとおり、もう出てこないのだろう、きっと。
修業や修養が万人の身についていた時代は遠く過ぎ去った。最短距離や効率に目を奪われすぎないでい続けるのは、極めて難しくなっている。
