貧富の偏在なんて、いまごろ描いてどうする?
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貧しくて何もない僻地から出稼ぎにやってきて、街で開発が進むうちにどこにも行けなくなった男。彼の日常ひとコマひとコマに焦点をあてて、それを短い時間で描いていく。彼の生い立ちと生活から、貧富の偏在という現行システムの弊が浮き彫りにされる。
どこへでも行けた男は豊かさを求めて街へ出ることを選択し、男が脇目を振る暇もなく懸命に働いていたあいだもその街は開発が進んでいまや男にとって別世界となり、年老いて再び異邦人となった彼は生活圏から出られなくなった。警備員という彼の仕事がそれに拍車をかける。
結局「なんかパワーはあるけど(ロウ・パワー)よくわかんない」作品ができあがって、こういうのは評者用の知的クロスワードパズルにはいいだろうが、その段階で止まられちゃ困る。こんなだったらジャック・ロジエの『ブルージーンズ』なんかのほうがはるかに上質だし、優れてる。
この手の映画たちは洗練されていないこともあるし、スタイルはあるがユーモアや客観性―これが適用外だから困るのだ―に乏しい。
球速はあるがストレートしか投げられず、コントロールもおおざっぱなピッチャー。これでは試合も荒れる。