しかし猫は得をしていて犬は損をしているというのは、もはや疑いの余地のないところである。猫は人間より賢いと思っている人もいるくらいだし、人としゃべれるのにあえて黙っているのだと言う人もいる。猫をかぶっているのというのだ。しかし猫が猫をかぶったらそれはもう猫ではない、何か別のものだ。
・・・まあいい、話を戻そう。猫といえば自由で奔放で、自分に備わった天性の魅力だけで世の中を渡り歩いていく。いっぽうの犬は首輪につながれ、常に忍従を余儀なくされている(ように見える)。誰が言い出したのか―きっと友達のいない芸術家だろう―猫は神秘的で人の考えていることがわかるということになっている・・・本当かね?
犬と猫の境遇の差を調べるために、いろんな言葉を検証してみよう。
1 (化け猫に対して)犬死に。・・・ひどい言葉だ。猫のほうは死んでもこの世から去らないというのに。
2 負け犬。「負け猫」「勝ち犬」ともに違和感がありすぎて哀しい。 ?「会社の犬」、「犬のように働く」・・・万国共通なのは、ビートルズを聴けばわかる。I’ve been working like a dog.
3 裏切り者としての犬(あるいはヤクザ映画における「狆ころ」)・・・猫のほうが裏切り率は遥かに高いのだが、猫が裏切ると裏切られた人間が喜ぶという不思議な構図が成り立っている。
それで僕はといえば断然犬を支持するのである。
