●ジャコ・パストリアス『モダン・エレクトリック・ベース』
ベース教則ビデオの名作。ジャコの音源は数多あれど、ひょっとすると適当にアルバムを聴くより、これを観た方が面白いかもしれない。
ジャコのオリジナル・アルバムは、難解でイマイチのれないこともあるし、ファンキーで楽しい演奏も多い反面、作品単位で見ると散漫になったりして、1stはまさに全力投球といった感じで文句ないのだけれど、なかなか愛聴するところまで至らないのがもどかしい。そんな方はけっこういるんじゃないかと思う。
このビデオは彼の最晩年のもので、聞いたところでは、ヤクに溺れてにっちもさっちもいかなくなったジャコを何とかしようと、ホテルに缶詰めにして撮影したものらしい。随所に挙動不審なところが見られるので「このヒト大丈夫かな」と一瞬心配になるが、ベースを手に取るやもの凄い演奏で吹き飛ばしてくれる。
自身による演奏の解説も貴重で、ホスト役のジェリー・ジェモットが巧みにコメントを引き出している。キング・カーティス等のバックでベースを弾いていた人だが、このあたり完全に人選の妙と言っていい。
ジャコの演奏スタイルは基本ファンクのりではあるものの、クラシカルな要素や、アフロキューバンの香りもあり、かと思うとジミヘンみたいにノイジーなこともするしで、本当にジャコ・スタイルという他ないが、生まれ育ったフロリダの環境に負うところ大であったようだ。
ジョン・スコフィールドを交えたセッションも収められ、さらにエンドロールではピアノを演奏するところまで見られる。
ちなみに教則DVDなので、大抵はレコード屋ではなく楽器店にあります。買って損はないと思う。
