ヘリコバクター

 ピロティ。いや、ピロリ。

 

***

 

 クモは家の中の害虫を食べてくれる、ということで、見かけてもそのままにしていたら、徐々に大きくなっている。チャスジハエトリという小型のイエグモの一種で、事務所などでも時折見かけることがある。黒いボディの背に白いスジが入っていて、ピョンピョン跳ねるのが特徴である。

 

 クモは吉兆であるともいうし、引き続き放っておく所存。タランチュラみたいに大きくなったら怖いけど。

 知り合いによると、台湾には本当にそのくらい大きいクモが家の中に出るらしい。ちなみにそいつは無毒だそうだ。たぶん厳密には微毒を持つはず―でないとクモにしたって獲物を倒すのが難しくなっちまう―だけれど、人間のサイズだと効かないということなのだろう、きっと。

 

 

 毒グモといえば、その昔小学生の頃、TVで「セアカゴケグモの恐怖」というのをやっていた。それ以来、夏の自動販売機の取出口に手を入れるときはずっと警戒している。

 当時は西日本にしかいないと思っていたが、いま調べると割に広く分布している。噛まれたら病院に行かないとならないレベルの毒の持ち主なので、注意が必要と思われる。

 

 一体ぜんたい、どういう経緯で必要以上の毒を持つ生きものが生まれてしまうのか、何らか理由はあるのだろうが、考えても何も思いつかない。突然変異という名の偶然だろうか。

 こういう連中は猛毒を持っているくせにイマイチ種の中でも目立たないというか、決してメジャーにならないのも不思議である。適者生存とか選別淘汰とか、そういうものとはまた別の次元で、何かたまたまプレゼントでオプションがついたとか、そういう話なのだろうか。なんだかよくわからんな。

 一時は世界に覇を唱えた最強の騎馬民族であるモンゴル人が、現在はアジアの一小国として静かにしているようなものか。これまたよくわからんな。

 

 

 さておき、昔の昼間のTV番組の中には、若干の恐怖心を誘うものがあったように思う。ヘリコバクターピロリもそのひとつで、「胃酸でも死なない恐ろしい奴」という触れ込みだったと記臆している。

 いまはメディアでそんな風にやってもすぐにスマホで調べて弱毒化してしまうから、効き目がないのである。

 

 

 ホラや与太が消えていくとゆとりや潤いが減って、夢がなくなっていく。「何だかんだ真面目だから」というのは褒め言葉ではないと、つくづくそう思う。