いぬの毛になる

 なってどうするのかまでは知らぬ。

 

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 仕事中の徘徊は望ましくない、と言われたので―イエローカードだそうだ―、椅子にへばりついている格好である。何ともツライ。お尻が痛い。

 

 こないだどこぞの会社の受付さんと飲んだ時、シフトが決まっていて担当の間はトイレにも立てない―もし行くときは交代相手に連絡して降りてきてもらわなければならない―と聞いて「有り得ねえ」などと呟いて終わったのだが、自分がそんな立場になってみると「大変だなァ」としみじみ感じられる。

 

「この会社は名前は同じでも、部署が変わればもう別、ヨソ」なんだそうだ。そりゃあうろんなヨソ者がうろついてたら不審であるものな。グリンゴォ。

 さらに言えば17時ちょうどの打刻もご法度なのだそうで、スタッフさんならいざ知らず、急いでいるならともかく、毎日はダメなんだって。17時に打刻するってことは4時58分から仕事してねえじゃねえかという理由なのだが、これはたんなる理屈だから、別の理屈もたてられる。

 

 理屈同士の議論は不毛な結果に終わるから、社内の上下関係に従ってまず謝し―そうこの国のマジックワードは「すみません」と「ごめんなさい」だ―、それから少し下を向いて時折肯いていればいい。たまの返事ははっきりと。暗いと印象悪いからネ。

 

 まあ、手足が頭の命令をきかないなんて重大な欠陥だし、手足がものを考えだしたら船頭が増えて漕ぎ手が減るようなものだから、そりゃあやっちゃあイカンよな。

 

 兵士は考えない。行動するだけだ。行為の結果について思い悩むのは脳みそを使う係のやることで、今のところ己には縁がないのだな。そんなことがよくわかった一週間だった。

 

 

 

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