「雨は旅の合図だ」とペングィンは言った。「我々は風になって次の街へ向かう」
「何ていう街だい?」
「次の街に名前はない」とペングィンは言った。
果たしてペンギンが空を飛べるものなのかどうか、僕は訝んだ。それを察したかのようにペングィンが言った。「私の手は羽根にもなるんだよ。知らなかったかい?」
そしてペングィンは続けて言った。「それより自分の心配をした方がいい。風にならなければ次の街へは行けないのだから」と。
その通りだった。人間には羽根などという贅沢なものはついていないのだ。