ぶら下がり日誌~ボルダラーへの道~

釣りときどき岩、そして

静かの海

 

「雨は旅の合図だ」とペングィンは言った。「我々は風になって次の街へ向かう」

 

「何ていう街だい?」

 

「次の街に名前はない」とペングィンは言った。

 

 果たしてペンギンが空を飛べるものなのかどうか、僕は訝んだ。それを察したかのようにペングィンが言った。「私の手は羽根にもなるんだよ。知らなかったかい?」

 

 そしてペングィンは続けて言った。「それより自分の心配をした方がいい。風にならなければ次の街へは行けないのだから」と。

 

 その通りだった。人間には羽根などという贅沢なものはついていないのだ。