ぶら下がり日誌~ボルダラーへの道~

釣りときどき岩、そして

暗騒音

 自分で手放したのだ。最後の手綱を離したのだ。

 

「もうお前はどこにも行けない」そうペングィンは言った。

「うるさい、ペンギン風情が何を言いやがる」僕は悪態をついた。

 

 ペングィンは哀れんだような眼で僕を見た。彼の羽根が細かく震えていた。彼は言った。

 

 

「お前はずいぶん前に人であることをやめた。だがお前は獣にもなれなかった。理性がありすぎたからだ。お前は機械にもなれなかった。こころを消せなかったからだ。だからお前は何にもなれなかった。これからも何にもなれない」

「はっきり言っておく」と僕は言った。「お前なんかどっかに行っちまえ」

 

 ペングィンは羽根の付け根をピクリと動かした。肩をすくめたつもりだろう。