K氏は予定を立てるのが好きではなかった。束縛されるようで、嫌だったのである。
にもかかわらず、これからのことをメモするのは、彼にとって習慣となっていた。それも日に二度、三度ではない。何度も書くのである。
K氏は何にでも書いた。それは紙ナプキンであったり、煙草の包み紙であったりした。時にはレシートの裏に書くこともあった。判読できないこともしばしばだったが、一向構わぬ風だった。彼は言った。
「こうして書いていると、別なメモに何度も同じことを書く羽目になる。それがしなければならないことさ」
さてそのしなければならないことをどうしたらいいのかについては、K氏は何も教えてくれなかった。彼はものぐさだったのである。