失中

 家人がイノシシのことをしばしば「イノスス」と発音するので「かっぺい奴」とからかっていたら、なんと学名がSus scrofaだった。ススは合ってんのか。

 

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 イノシシ話の続き。

 

krokovski1868.hatenablog.com

 

 あれからイノシシ関連の書籍を何冊か読んでみているが、結局、捕獲よりも進入防止が現実的で、それも忌避剤や音では不足で、柵の設置につきるようだ。そしてどうやらその柵も費用と手間がずいぶんかかる印象。補助金が出るとはいえ、設置と維持にかかるコストがとても大きい。

 

 江戸時代には猪垣というのがあって、場所によっては今も遺構が残っているのだそうだ。石塁や土塁、木柵だったらしい。

 今日び自分で土嚢を積んでいこうとしたら日が暮れてしまうし、木を伐り倒して柵代わりにするというのも大変だ。広範囲にわたって石を積むのが無理筋なのは言うまでもない。つくづく先人はエライ。首を垂れるのみである。

 

 イノシシは助走なしで1.2メートルもジャンプできるとされるが、これには実験環境という但し書きがついている。実際はジャンプした先に何があるかわからないので高いところを跳ぶのは稀で、先に地面を掘ろうとするのだそうだ。それはそうだよな。

 

 彼らは見通しが利かない状況では突進しない習性があるそうだから、トタンか何か買ってきて立ててみるか。それこそアッサリ押し越えられるか、地面を掘られて進入されてしまいそうである。

 柵に返しをつける、網を垂らして踏み切り位置を遠くする、といった追加の工夫が不可欠のようだ。実際は、トタンを固定するため杭をたくさん地中に打っても、その間から侵入されてしまって、なかなか厳しいらしい。

 

 豚毛のブラシを使ったことのあるボルダラーならわかると思うが、あれはものすごく硬い。全身をそんな素材で覆われているわけだから、もはや鎧である。

 したがって有刺鉄線などは大した足止めにならないし、電気柵も鼻以外の箇所では劇的には効かないという。おまけに電気柵は必要な電圧を維持するために頻繁な点検・管理が必須となるらしいから、これもパスせざるを得ない。

 

 結局、上手く柵をしたとしても、囲ってそれで終わりにできないのが問題で、周りの草刈りなど、囲いを維持するためのケアが必要だし、それをしたところで、いずれはイノシシが柵の存在に慣れてしまう。

 

 つまるところ人間が見回るのがいちばんよくて、けもの道を歩いてやるだけでも効果があるという。けもの道を探すときは、釣りのポイント探しと同様、変化のある場所に着目する。足跡や糞、折れた枝といったフィールドサインが手がかりになるとの由。

 

 イノシシにとって最大の天敵は柵より罠より人間なので、定期的な見回りがいちばん効くのだけれど、獣が里に下りてきているというより人が山に取り残されている現状では、それが極めて難しくなっている、というのが問題の根幹のようだ。人間がダメならウシやヤギを飼うという手もあるが、そもそも単独で対策してどうにかできるかはかなり疑問。

 

 なお、獣害対策ハイキングやエコツアーを実施している地方もあるらしい。参加者に山道を歩いてもらい、ついでに獣害への理解を深めてもらおうという趣旨のようだ。なるほどなあ。

 

 この辺だとシシ垣は小豆島に残っているそうなので、岩探しがてら出かけてみようか。そしてぼちぼち実家の土地の境界も確認しておこう。