SUPER DUPER RAFT

 小僧が出て行ってから五分も経つと、ノアの洪水以前の木片のようなものを引張って出て来た。最近どこかから発掘され、しかも発掘の際、不必要に損傷を受けたような傷だらけのものである。(ジェローム・K・ジェローム『ボートの3人男』、丸谷才一訳)

 

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 丸谷才一の『文章読本』を読んだのはいつのことだったろう。たしか学生の頃だ。「ちょっと気取って書け」という一節があったのを今でも覚えている。

 

 文章読本といえば谷崎潤一郎だが、こちらは覚えているのは「兵語体」のみである。「~であります」とかそういうの。合っているか自信はない。

 

 谷崎といえばビニール紐で括られた『源氏物語』がたまたま手元にある。祖母宅で長年眠っていたのを持ってきてはみたものの、取り出す気にもなれず、置きっぱなしになっている。そのうち風化しちゃうんじゃないかという感じである。んなこたあ~ない。

 

 谷崎の小説で思い出せるのは「熟柿」である。短編の途中に出てきて、プロットとは直接関係ないが、結果的に小説内の白眉となっている。ちなみに「ねどべど」という岩も出てくるが、これもシナリオとは殆ど関連がない。

 

 連想小説というか随想小説というか、注釈がないと筆の運びについていきにくい作品で、注釈があっても時代背景を共有できないので、どうしても読むのがスローモーになってしまう。題材の重さと緻密な構成でスピード感が失われそうになるのを、連想によるイメージの飛躍で補いつつ、中間部の熟柿の描写でグイと引き込むという、元は相当に意欲的な作品だったのではないかと思われる。

 

 たしか2つのエピソードを同時に進める形式で、狐が重要な役割を果たす筈なのだけど、いかんせん15年以上前の記憶なので、細部が一向にハッキリしない。たしか南北朝がどうとか言っていたと思うのだがこれもあやふや。

 

 ・・・今朝がた実家から届いた干柿を食べて谷崎の熟柿を思い出した、という話。柿よ、お前は何もつけないのに天日に干すだけでどうしてこうも美味くなってしまうのか。シイタケやアワビも凄いが柿よ、アンタもエライ。頭が下がる。

 

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 気になって調べたら『吉野葛』という作品だった。しかしもう一回読むかは微妙。大谷崎は一寸読もうと思っても呑み込まれちゃうからなあ。読んで調子を整えるとか、そういう相手ではない。

 

 読んで調子の良くなる本についてもそのうちにまとめよう。