パウリスタ

 「~どこ行ったか知らん?」

 「置いたところにあるでしょう?」

 ―たしかに。

 

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 コーヒーを日常的に飲みはじめたのは、確か小学校の高学年からだった。コーヒーがないときは、紅茶を飲んだりしていた。ンー、ナマイキだ。

 

 中学校に上がってしばらくした頃、同級生に「コーヒー飲むとバカになるんだってよ」といわれたものの、意に介さず飲み続けていまに至る。

 

 そういえば学生時代にも、しじゅう缶コーヒーばかり大量に飲んでいる筆者を見かねたベトナム人留学生に「コーヒーは毒です」と心配されたことがあった。どうもコーヒーというのは評判がわるいらしい。「君らベトナムコーヒーはどうなんだ」と聞くところまで思い至らなかったのはたぶんコーヒーのせいではない。コロンビア人があまりコーヒーを飲まないように―あれは完全に輸出用作物だ―、ベトナムでも事情はおなじなのかもしれない。

 

 それでいったいコーヒーのなにが毒なのかと考えて、カフェイン以外でなにかあるのか気になった。もっといえば、われわれは本当は毒の入ったものが好きなのではないかと、そんな考えまで浮かんできたので、打ち消す必要を感じたのである。

 

 もっとも、これはひとつには眼の問題でもあって、毒も薬になるという話だが、水だって飲みすぎれば毒だし、酒にしてもそうだ。煙草だって毒だし、ドラッグもやはり毒だ。

 

 こう書くとずいぶん堕落したようだけれど、健康なことしかせず、健康なものしか食べないというのは、それはそれでどこか不健康な気がするのは、自分がすでに汚染されているからなのか。「清濁併せ呑む」などと呟いてみても悪徳政治家みたいになっちゃうし。どうにも説得力というものがない。

 

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 ところでチコリコーヒーというのがあるが、あれはいわゆるコーヒーではない。いうなればコーヒー版ルート・ビアみたいなもので、コーヒーだと思って飲むと顔をしかめることになる。気になる方はカルディあたりで試してみてください。

 

 以上、連絡終わり。