映画の話13

 『GUNS&GOLD』(ジュリアス・エイバリー、2013年)

 

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 脱獄もの、クライム・アクション、『トレイン・スポッティング』、『天使の分け前』、あるいはライバル不在の『HEAT』といったところ。悪なのだがうまくやりおおせてしまう。悪事をはたらくのだが若者の成長物語とすり替えられてそれと感じない仕上がりになっている。

 愛にハッタリにしてやったりと、インスタントな訴求力に満ちている。余計なものを大胆にカットしたらディテールも欠落して結果として紋切型へ接近したというような作品。

 わかりやすく観客を裏切らない、テンポがいい、このあたりは言いよう考えようであって、どっちに感じたかというだけの話でしかないのだが、それによって評価が180度割れる、そういう映画。

 

 キャラクターの過去は切り落とされ、せいぜい暗示されるにとどまる。リーダーは父親代わりで、子供だった主人公は成長して親越えを達成するものの一人では無理で愛の力に頼る―ヒロインですね。

 基本線は応報ものなのだが成長した息子は少しも報いを受けない。内面の描写や葛藤も殆ど描かれないから、既成のストーリーラインに気持ち良く乗っかって突っ走って終わる。

 タイトルはチェスの勝負手(son of a gun)と息子の成長物語を引っかけているんだけど、ちょっと話がうますぎるよね。「Things are not as you imagine」なんていう台詞もでてくるが、まあこれを思い通りにしてしまうという話。

 

 クライム・アクションは公権力への反抗を見せるもので、するとこれは代償行為としての映画鑑賞ということになるのだろうか。せめてスクリーンの中くらい、夢を見たっていいだろう?