ぶら下がり日誌~ボルダラーへの道~

釣りときどき岩、そして

武士道

 置物のそれではなく生きて躍動する美、そのために心胆を練り上げる。美意識とはそういうものである。

 

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 久しぶりの電車はいい。昔からこの運ばれていく感覚が好きだ。電車のように黙って移されていく体の乗り物はとくに。

 

 線路上は電車だけの世界である。車やバスとは違う。旅客機は単独で速くて自由だが、途中で勝手に降りられない。その点、電車は気が乗らなかったら途中下車すればいい。気楽である。おまけに酔いにくいし、言うことなしである。

 

 移動が精神にもたらす影響というのは間違いなくあると思う。筆者の場合、中高5年間の電車通学が、自分の人格を少なからず決定づけたと思っている。

 

 ローカル線の20代後半女性コンビの会話。

 

「座ったら?」

「座りい」

「ヒール履いとるけん、座りい」

「いい、いい」

 

 結局2人とも座らない。

 

 美意識が美質にまで昇華されてしまっている。傍目には奇異に映るかもしれないが、こういうのはもう国民性であるといっていい。

 以上、定期連絡。