「あなたが生まれたとき、あなたは泣いていて、周りの人たちはあなたが生まれたことを喜んだ。だからあなたが死ぬときは、周りの人に泣いてもらえるように、そしてあなた自身はわらって眠りにつきなさい」
―ネイティブ・アメリカンの民話―
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前回の続き。
キットを組んで、件の6V6GTを挿して、それで音が出れば犯人は電解コンデンサだし、音が出なければ6V6GTの単独犯か6V6GTとコンデンサの共犯である。コンデンサが主犯で6V6GTは被害者かもしれない。だとすると6V6GTを交換してもしばらく使ったらまた駄目になるだろう。そもそも液漏れならおおごとなので、使うことじたいNGである。
電解コンデンサは消耗品で、その寿命はざっと30年程度らしい。取り替えるしかなさそうだ、そう思って基板を取り出そうとしたら動かせない。基板の裏から配線が縦横に伸びていて、その先がハンダで真空管のソケットやらトランスやらスピーカーケーブルにつながっているので、にっちもさっちもいかない。
そもそも何がどうなって基板が固定されているのかサッパリわかっていないので、手のつけようがない。せめて基板を裏返せないと部品交換はできないのだが。しばし途方に暮れていた。
せめてもの収穫はMT管のシールドケースの外し方がわかったこと。いったん押して、押したまま回すという、自転車用のケミカルなどで出てくるパターンである。無理に引っ張って壊してしまうところだった。洒落にならない。
中から出てきたのはFenderの刻印の入った12AX7A。管壁の根元近くが少し銀色に変わっており、ゲッターの面積が気持ち少なくなっているものの、明らかにダメという風には見えない。
今のところの感触では、直接の犯人はやはりパワー管のように思える。管が黒いので中の状態がわからない―黒いのは熱に対処するためだそうだ―が、てっぺんと根元部分が変色しているのが見える。新品と挿し替えて音が戻った点からしても、6V6が悪さをしているのではないかと思う。
キットが完成したらいっぺん挿してみるか。どうだろう、ダメになった真空管をつないで新品のアンプもダメになったらそれもショックである。その辺の塩梅もわからない。難しい。
いずれにしても、このアンプの電解コンデンサは交換すべきなのだろう。だがこれも今はできない。レベルが足りない。
まだまだ道遠し。