勿忘

 語ると何でもきれいに見えるが気をつけろ、そんなのはまやかしだ。

 

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 「・・・戦後の三十余年間、日本の、とくに大都会の人々は、巨大な災害に対して、瞬間的に身を処するマナー―戦前までに、大火や地震や水害などの数百年を通じて形成されてきた「災害文化」ともいうべきもの―をきれいに失ってしまっていた。まさかの時、自分を救けること以外に、一人ひとりが自分の手もとで、災害拡大の可能性を小さな芽のうちにつみとるために何をしなければならないか、という実際的知識と、「市民の義務」の意識を、ほとんどの人が持っていなかった。」(小松左京日本沈没』第四章)