狂人の王

「あいつは、まだ狂ってるのか」緑色の山高帽をかぶった小人がいった。

 

「ちゃんとした一人格ではないな」そう灰色の男がこたえた。「しかしまあ、奴はどこかにはいる。それはまちがいない」

 

***

 

 何におびえているのか? 自身の影に、自分でつくりだした混乱に、である。人間はいつのまにか浪費しつづけなければ生きていけないようになってしまった。欲望が文明をそだて文明が欲望を加速させ、欲望は永久機関のようにふるまい、何か大切な、とっておかないとならないものが、どんどん消費されて、あとには何ものこらない。

 

 いっぽうで、動植物は消費はしてもかわりに何かしら生みだして、それをサイクルにする。われわれはこのサイクル化のしかたをどんどん忘れていっており、人口が激減するまでおもいださないとしたら、ほかの種にとっては都合がいいのである。あるいは地球が自分に都合のいいように人間をつくったのかもしれない。それはわからない。

 

 ひとびとの織りなすサイクルは、氷河期と間氷期のサイクルよりはるかにみじかいので、いつまでも地上の歴史のはじまりとおわりをつかめない。じつはこれがわれわれの生みだすあらゆる混乱の源なのである。

 

 ・・・なんのこっちゃ、ワケ、わからん。いったん連絡おわり。