岩好きが嵩じてオフィスでも固まっている、なんて、洒落にはならねえな。ロック好きが嵩じてクライマーになるようなものか。何だかよくわからんな。
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使い道もないのに過剰な技術を持っている。それ自体は修業の賜物なのだけれど、世のため人のためにまったく役立っていない。すなわち無用の芸に長じている。
実際の役に立たぬことに血道を上げるのは、実際どうしてなのだろう。無用者への憧憬がそうさせるのか、私にはわからないが、岩を登る能力などはかなり典型的ではないかと思う。
意味のない―否、世の中の役に立たない一分野に、つきこんでいく。その時を充実させながらその時を忘れながら、依然として社会的には殆どゼロのままでいる。
その行為の結果に何を求めるかはまた別の問題だ。世に己の爪痕を残すのにどの程度コミットするかについて、他人の容喙を入れる余地はないのだ、本来は。