呵成

 前回のつづき。

 

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 総じて、作品のボルテージを保つスタミナが最後までつづいていないきらいはあるものの、むしろこの規模のストーリーをよくここまで万人受けしそうなかたちに落としこんだものだと感心する気持ちのほうがはるかにつよい。たぶん、あそぶ側がもうすこし腰を据えて、主人公のレベルを40以上にあげ、レベルの高い魔獣を合成しつつ、30時間程度かけてクリアすることを想定しているのだろう。じっさい、サブイベントを飛ばしている気配もあったので、よけいにそうおもう。

 

 しかしながら、それをさし引いてもストーリーの強度がちょっともたない感じはする。このままのバランスでエピソードを多少整理してへらすか、むしろ30時間かけるなら、後半に物語の展開スピードを上げずに、いっそ敵をもう一段階強くして、レベルを50ちかくまで上げないと倒せないようにしたほうがよかったかもしれない。ただし、そのためには人物の背景説明や人間関係を掘りさげなおす必要もでてくるので、調整はかんたんにはいきそうもない。

 

 じっさい、最後の2時間は惰力でプレイしてしまっていた。個人的にはプレイ時間が1日を超えると、バランスがよほどよくないとキツイ。

 

 とはいいつつも、筆者がレベル上げを好かないので、その点もさっ引いてかんがえなければならないだろう。あつめた魔獣カードを見るかぎり、魔獣の最大レベルは50近辺なので、主人公のレベルもそのあたりを想定しているのかもしれない。ただ、それだとボスの強さがちょっともの足りない気もする。いずれにせよ、戦闘の難易度とストーリーの両面からみて、ラスボスまえの中ボス部分にもうすこし膨らみがあるともっとよかったのかなとおもう。

 

 ついでに付け加えるならば、魔獣カードは雑にプレイしても9割方はあつめられるようになっていたので、カードゲーム風にあそべてもよかったかもしれない。全種類コンプリートすると人間用のつよい武器がもらえるとか、多少エンディングがかわるとか、魔獣がわるくない確率でカードを落とすので、そういう要素があればさらに立体的にあそべたのではないかともおもった。もっとも、筆者はちゃんとコンプリートしていないので、ひょっとしたらなにかイベントが用意されていたのかもわからない。

 

 なんにせよ、人間と魔獣が共存している世界で気軽に共存相手を合成してしまうというのが最大の違和感ポイントだが、これが本シリーズの世界観なのだろう。友だちに勧められて手もとにずっと持っている『真・女神転生』をそろそろプレイしてみたくなった。

 

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 こうして見てくると、RPGにおけるストーリーのバランスどりというのは、ものすごくむずかしいもののようにおもえてくる。重要人物の死の扱いなどはとくにそうで、レトロゲームは基本的に子ども向けなので、ある種の小説のように死が物語をすすめる装置になっては困る。リアル路線とコミカル路線の折り合いをつけるのは無理筋である。

 

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 この点、TVゲームは最初からB級なので、高次元で辻褄を合わせようなどとかんがえないほうが、結果としてうまくいくことが多い気がする。極端な話、制作陣も把握しきれなくていいというか、ある程度まで不真面目でいいというか、ハッタリでいっこうにかまわない。

 

 もちろん、本格派はあっていいのだが、種々の制限のなかの一瞬のバランスで成立するレトロゲームにおいては、捨てる部分こそ重要である。小3男子に愛だの恋だのいわれてもピンとこないし、内戦だのレジスタンスだのといわれてもやはり困る。

 

 といってストーリーもなにもかもほんわかではいかんというのだから始末がわるい。ゲームをすすめていくには求心力が要る。そして、ストーリーの芯は、しまいまでプレイすることによってはじめてプレーヤーの中に宿る。そういうものだ。

 

 結句、レトロRPGトリュフォーではなくゴダールをめざす。以上、報告おわり。