鍍金

 「大きな財産は大きな権力に結びついていて、大きな権力には不正がつきものなんだ。それが世間のからくりさ。どうにも仕方がないのかもしれないが、いい世の中とはいえないよ」

―バーニー・オールズ―(レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』)

 

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 人間関係がないものだから、土台に悩みや苦しみやいかりがない。世をはなれているので生は肯定的にみえ、実存はすべてうつくしいものとして意識される。とはいえ、おかねの問題があるから、依然として地に足はついたままである。

 

 つまるところ自分ルールというのは、自己規範と格率と生活道徳のブレンドのようなもので、自身と生活のあいだでゆれている。その場にとどまってゆらぎつづける、私はほとんどそのために生をつかっているといってさしつかえない。

 

 要は育休をとると社会人から自然人にちかづいてしまって、そうなると生の諸相はすべからく肯定的に映るようになる、というはなし。まやかしというわけでもないのだろうが、ある種の不注意さというか、何か罠めいたものを感じる。

 

 いったん連絡おわり。