タピオカ・プディング

「私か。私は、タピオカ・プディングだ」とそれはいった。

 

「めづらしい名前だなあ。なんかぷよぷよして顔色もわるいし。ひょっとしてアンタ、外人さん?」と村の駐在はいった。

 

「ちがう。私はタピオカ・プディングだ」タピオカはくりかえした。

 

「・・・ま、いいけんど。んで、タピオカさんは、こんな田舎に何しに来たんだ?」

 

「じつは宇宙艇―ソーサー―を捜しているのだ」と、タピオカは切りだした。「ここに来る途中で付近に墜落してしまったらしい」

 

「ソーサー? なんかねそれは?」と駐在がたずねた。

 

「平たくいえば皿だ。それに載って私はここまで来た」

 

「いったいどこから来なさっただ?」

 

「隣村の製造工場からだ」

 

「たまげた! 隣村ちゅうたらこっから2,000キロはあるど」

 

「この付近の制限速度が時速300kmまでだったので、ずいぶん時間がかかった。悪路のために道中だいぶタピオカをこぼしてしまった」タピオカ・プディングは無念そうにいった。

 

「それはながい道のりをご苦労さんでしたなあ」と、駐在はいった。