牛後

 遊んでいる人は、他人が遊んでいるのに厳しい。理由―遊んでいるぶんよく見ているから。

 

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 大脳新皮質が発達する前の動物は、代償動作がないから怪我をしない。我々は腕一つ動かすにも複数のやり方でできるから、かえって最適な動きを忘れてしまったり、無理な動かし方をして壊してしまったりする。

 

 ・・・怪我をしたアリを殆ど見たことがない理由が十数年かかってようやく腑に落ちた。彼らは我々よりはるかにシンプルな回路で動いているから動作に紛れというものがなく、常に最適な動きしかできないのだ。

 

 対してまったく応用力の功罪とでも言おうか、器用貧乏といおうか、人間ってつくづく難儀な生きものだ。ひょっとしたら組織の中の人間についても同じようなことが言えるのかもしれないが、それはまた別の話。別の機会に、話すことにしよう。