This Side of Paradigm

 組織に特有の奇妙さ、すなわち効率の反転とでも呼ぶべきものが、あるのである。

 

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 3という数は効率がいいが、その3人がいかに秀でていたとしても、30人分の仕事はできない。  それをひっくり返せるのは天才だけだ。3000人を必要としていた仕事を3人にしてしまう、ゲームのルールを根底から変えてしまう、それが天才である。

 

 組織内で効率よく働ける人材、というだけでもう得がたいのだから、こうした天才を穫れる確率は、これはもう、殆どゼロといっていい。

 

 ここに至って天才はロマンとなる。存在し得ぬ理想、いつまでも掴めず体現できず達成されず満たされず実現されず顕現しない夢。

 

 もっと言えば、天才は架空の消防士のようなものかもしれない。有事の際は登場を待ち望まれる一方、平時にその力を発揮することはなく、それどころか本当は活躍しないことを望まれているような存在。組織における天才の立ち位置は実はそれに近い。

 

 このあたりの事情を抜きにしてしまうと、この国の組織では誰も幸せになれない。残念ながら。