急に食う牛肉

 それにしても、打ち合わせの好きな人が多い。しなくてもいい打ち合わせをすると、しなくてもいいものだからつい自由になって、あらぬ方へ話が向かって、その方向で新たに打ち合わせが設けられたり、いちど切った舵を戻すためにまた打ち合わせが必要になったりする。

 

 だから要らぬ打ち合わせをするときは、心配性の人と創造力のある人を、メンバーに入れてはいけない。上に述べたことが起きて、最小でも2度、余計な打ち合わせが追加されることになるからだ。

 

 実際には、不要な打ち合わせを一度で終わらせるのは至難の業である。なぜというに、人は、ものごとをどちらの方向にも動かさないまま、じっとしていることが苦手だからである。話を進めるために行われる打ち合わせで、議題を小一時間、原型のままとどめておくことは頗る難しい。

 「だったらそんな打ち合わせ要らないじゃない」と思った方、そういうわけにいかないのです。なぜと言われても困るのだけれど、とにかくそういう風になっているのである。

 

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 放任主義、すなわちレッセ・フェールの代表の一人であるクーリッジ曰く、「他人の話を聞いていても黙っていれば問題の5分の4は解決する」のだそうだ。

 

 鑑みるに、これを実行するには残りの5分の1を切り捨てる度量が必要で、大抵はそれを救おうとして口を開いてしまい、沈黙を破った途端にどれが5分の1だったのか見えなくなって、5分の4を解決するなど思いもよらぬ仕儀となり、せいぜい半分を、それもおよそ賢いとは思えぬやり方で何とか達成して、関係者一同「やれやれ」と胸をなで下ろしているのが実情ではなかろうか。

 

 最適解に向かってまっすぐ進まないのが組織。それは無駄からできている。

 

 

 

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