ほんとうにじぶんがその立場になると、かえって書けなくなる。わからないうちは書けるが、わかると書けなくなる。
まるでモリエールにでてくる人物だ。自分の書くことをまず経験してみなければならないが、いくらか経験すると、こんどはそれを書く気がぜんぜんしなくなる。
あたりまえのことだが、まったくおなじ経験をする必要はないのである。おなじ気持になる経験をすればいい。それで共感できるし、場合によっては書くこともできる。
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万年筆ばなしのつづき。
万年筆をつうじて、書くのがたのしくなるというのはあるかもしれない。うまくパターンに入れれば、書くストレスはすくなくなるし、ボールペンにくらべるとどうしても角度は決められてしまうが、筆圧をかけずにすむ。エクリチュールの抵抗になやんでいるひとは、つかってもいいかもわからない。なんの話?
ウチにある2本のうち、パイロットは角度を決められてしまうかわりにインクはいつでもすばやくでてくる。いっぽうで本式のほうは、ペン先の許容角度はひろいがインクフローは不安定で、供給がおそいためはやく書けない。これらのトレードオフになっている。
たぶん、これもいつものごとく、本式の品をきちんと調整すれば解決するのだろう。ブティックに持ちこむだけでは不十分で、機会をさがして専門家の手をかりる必要がある。
復職しておかねができたら、ペン先を18金にかえるか、ペンクリニックに行こう。以上、連絡おわり。